ほくほく栗探検|里山から届く秋のごちそう

猛暑の夏を乗り越え、ついに秋の味覚・栗の季節が到来しました。
2025年は記録的な猛暑の影響で収穫量が減少し、小ぶりながらも甘みの凝縮された上質な仕上がりが期待されています。全国的に例年より1〜2割高い価格で推移していますが、丁寧に育てられた栗の濃厚な味わいは、まさに「待った甲斐」のある品質を見せています。
茨城・熊本・愛媛など全国の名産地では、今まさに収穫の最盛期を迎え、各地で栗拾い体験や収穫祭も相次いで開催されています。
この記事では、2025年の栗が見せる旬の魅力と最新収穫状況、そして産地や文化を通じて広がる栗の奥深い世界をたっぷりお届けします。
さあ、甘香豊かな栗探検の旅に出発しましょう。

待ちに待った栗の季節、いよいよ開幕だにゃ!
栗ニュース速報!里山が色づく”実りの合図”


朝露に光るいがが色づき、コトン…と落ちる音が里山に響きはじめました。
山全体がざわめく中、今年の栗の最新状況を速報でお届けします!



コトン、コロン…このリズムは秋の足音だにゃ!
🌡️ 栗速報①|収穫と相場の最新動向
≪収穫状況:減収傾向、秋の訪れがやや遅れ≫
今年の栗は、記録的な猛暑と少雨の影響で、各地で収穫の立ち上がりが例年より遅れ気味。主力産地の茨城県でも「暑さによる落果や害虫被害の増加」の声があり、主要産地では減収傾向が目立ちます。希少ブランドでは大幅減の報告もあり、作柄の地域差が大きい年です。
≪相場:希少性で高値基調に≫
減収の影響を受け、国産栗の相場は前年を上回る高値で推移。小粒傾向でも味わいの評価が高く、「高くても良いものを」と産地直送や予約販売が好調です
🌰 栗速報②|猛暑がもたらす「小ぶりでも高品質」
減収という厳しい状況下で、猛暑が逆に品質を押し上げる効果をもたらしています。
- 甘さの凝縮
猛暑によるストレスが、栗の実に甘みを凝縮させる効果をもたらしており、「サイズは小さいが、味の濃さは例年以上」という評価が各地で聞かれます。 - 密度が高く香り豊か
茨城県の生産者からも「一粒一粒の密度が高く、焼き栗にすると香りが格別」との報告が上がっています。 - 消費者意識の変化
この品質の向上により、栗は「サイズよりも味」という評価軸への変化が加速。消費者の栗に対する希少価値の意識が改めて高まっています。
🎉 栗速報③|秋のイベント情報
この秋は、モンブランの高級化や和菓子の人気再燃など、栗の消費スタイルに明確なトレンドが見られます。また、栗拾い観光などの体験型イベントも活発化しています。
- モンブラン専門店化の継続
「生絞り」「和栗専門店」ブームは継続。産地直送の希少ブランドを使った上質モンブランが今季も注目に。 - 栗拾い観光の復調
愛媛県中山町など産地の観光園で栗拾いが本格化。焼き栗や渋皮煮の試食など、体験型の楽しみが戻っています。 - 和菓子の再評価
渋皮煮、栗きんとんなど、素材感を活かす伝統菓子が“ごほうび手土産”として人気上昇。
≪2025年注目の栗イベント≫
- かさま新栗まつり(茨城県笠間市)
2025年10月3日(金)~10月5日(日)の3日間、午前9時~午後3時、笠間芸術の森公園で「かさま新栗まつり」が開催されます。例年9月末~10月上旬に開かれる産地最大級の栗イベントで、栗ご飯・焼き栗・スイーツなどの販売をはじめ、体験型イベントも充実。今年も注目度の高い秋の風物詩として、県内外から多くの来場者が期待されています。



今年の栗は、試練を乗り越えた分だけ甘みが濃いにゃ。小さくても、心に大きな満足をくれるにゃ!
栗の産地をめぐる|茨城・熊本・愛媛・岐阜・長野


山と畑、土と気候、受け継がれる技。地域が違えば、粒立ちも香りも物語も変わります。
2025年の収穫状況をたどりながら、各産地の“今年の表情”をのぞいていきます。



同じ”栗”でも、個性は船団並みに多彩だにゃ!
🌰 茨城県:笠間|日本有数の“栗王国”
生産量全国1位の圧倒的実力
茨城県は栗の生産量で全国トップを誇り、とくに笠間市は代表的なエリアとして知られています。筑波・銀寄・丹沢・ぽろたんなど多彩な品種が育てられ、直売所やイベント、加工品開発まで地域ぐるみの取り組みが根付いています。
≪2025年の状況≫
猛暑の影響で収穫は例年より約10日遅れが見られますが、小粒傾向ながらも甘みは濃厚に仕上がっています。「日本一の栗産地」の看板を背負い、品質向上と観光振興を両立する先進地域として、栗拾い体験は今年も大人気で早期予約が推奨されています。
🌰 熊本県:山鹿市/山江村|西日本を代表する栗王国
生産量全国2位を誇る実力派
熊本県は西日本を代表する栗の名産地。
とくに山鹿市の山鹿和栗は西日本一の規模を誇り、丹沢・筑波・銀寄など多彩な品種を揃えたブランドとして知られます。さらに山江村のやまえ栗は“大粒で風味が濃い幻の栗”と呼ばれ、和菓子やスイーツ業界で高い評価を得ています。
≪2025年の特徴≫
今年の作柄は、県内でも地域差が大きく出ており、山里によって豊作と不作が混在しています。しかし、品質の良い地域で採れた栗は例年以上の甘みが期待されており、焼き栗にした時の香りは格別です。
🌰 愛媛県:伊予市中山|日本三大栗、中山栗のふるさと
生産量全国3位の実力派
中山栗(なかやまぐり)の産地として知られる愛媛県伊予市中山町。昼夜の寒暖差と水はけの良い段畑の地形が、大粒で上品な甘さを育てます。丹波・小布施と並び「日本三大栗」の一つに数えられることもあり、ブランドとしての評価も高い地域です。
≪2025年の状況≫
猛暑の夏でも日当たりと水はけの良さが功を奏し、品質は良好に保たれました。実入りにばらつきはあるものの、締まった果肉は焼き栗にすると香ばしく、郷土菓子やモンブランなど和洋スイーツとも相性抜群。今年も直売所や栗菓子店がにぎわい、地域全体が栗色に染まっています。
🌰 岐阜県:中津川/恵那|栗きんとんの本場
文化と品種で輝く“和栗の都”
岐阜県は東濃地方を中心に栗栽培が盛んで、全国上位の生産量を誇ります。特に山県市発祥の「利平栗」は大粒で香り高い名品として知られ、渋皮がむきやすい「ぽろたん」など新しい品種も導入が進んでいます。中津川市・恵那市は観光栗園や直売所が集まり、秋には多くの人でにぎわいます。
≪2025年の状況≫
今年は気候の影響で粒の大きさや実入りにばらつきが見られるものの、良品の仕上がりは安定しており、焼き栗やスイーツとしての人気も健在です。特に栗きんとんは岐阜を代表する銘菓で、茶巾しぼりにした素朴な和菓子から、モンブランや栗パフェといった新しいスイーツまで、幅広く楽しめます。栗が「文化の核」として根付いている点こそ、岐阜の大きな魅力です。
🌰 長野県:小布施/飯島/安曇野|信州を彩る“三つの栗どころ”
三つの地域が織りなす多彩な風味
長野は主に栗の産地として、北の小布施、南の飯島(信州伊那栗)、そして北アルプスのふもとの安曇野があります。
小布施は江戸時代から献上栗として知られ、今も栗菓子の町としてにぎわっています。飯島は「信州伊那栗」の名前で知られ、ていねいな栽培と工夫で安定した品質を守っています。安曇野は豊かな自然と氷温熟成によって、栗の甘さをじっくり引き出すのが特徴です。こうした三つの地域がそろうことで、信州の栗は個性豊かに全国へ広がっています。
≪2025年の状況≫
夏の高温の影響で実入りにばらつきはあるものの、選果と仕立ての巧みさで香りの澄んだ上質感がしっかり表現されています。蒸し・焼きで旨みが締まり、和洋菓子の仕立てでは滑らかな口当たりが際立つ年。直売や菓子店は活況で、“文化×味”の強さが際立っています。



量の茨城、甘みの熊本、三大栗の愛媛、栗菓子の岐阜、文化の長野…さて次はどこに寄港するにゃ?
栗と文化|祭り・和菓子・家庭の台所に息づく“秋の記憶”


栗は”敷居の高さ”より”分かち合い”が似合う食材。収穫祭、和菓子、家庭の台所…場面が変わるごとに物語が増えていきます。
2025年は価格高騰により、より一層「特別な食材」としての価値が高まっています。



鍋のふたを開けた時の香り…それが家族の”秋の合図”だにゃ!
🍁 収穫祭とスイーツフェア|街が栗色に染まる季節
直売所・菓子舗・百貨店で「栗まつり」が各地に拡大し、街を栗色に染め上げます。焼き栗の香ばしさ、限定スイーツを求める行列、いがを飾った商店街など、栗は地域を活性化させる「参加型の秋」の主役です。
特に小布施や丹波篠山といった主要産地では、生産者と菓子職人、そして観光客が一体となるフェスティバル形式の催しが人気を集めています。
これは、栗を単なる食材としてだけでなく、秋の到来を祝う文化的な記号として楽しむ、日本独自の慣習です。
🍵 栗仕事の美学|茹でる・剥く・煮含める
栗は、調理に「時間と手間」がかかるため、渋皮煮は「手間=愛情」の象徴とされます。
渋皮を破らないように静かに火にかける下茹で、鬼皮を剥いた後の渋抜き、そして静かな火加減で蜜を浸透させる煮含めの所作には、日本の台所に宿る禅的な美学があります。
ほくほく感を最高に活かすなら、蒸しやオーブンでじっくり焼くことで香りを閉じ込めるのが定番。栗仕事は、秋の恵みに向き合う日本人の真摯な心を映す鏡のようなものです。
🍚 家庭の定番と郷土菓子|分かち合う秋
栗ごはん、甘露煮、栗きんとんなどは、特別な日だけでなく「日常のごちそう」として食卓にのぼり、家族の会話を増やしてくれます。
地域ごとの郷土菓子にも栗は深く根付いており、長野の栗鹿ノ子や、岐阜の栗きんとんなど、その土地の気候や文化が凝縮されています。
これらは、収穫を感謝し、秋の希少な恵みを家族や大切な人と分かち合うために生まれた、日本人の温かい伝統です。
🌲 栗畑の営み|剪定・草刈り・甘みを守る知恵
栗の豊作は、人の手による地道な手入れの上に成り立っています。
土壌を豊かに保つ草生栽培(いがや落ち葉を活かす技術)や、日当たりと風通しを確保する適切な剪定は、栗の甘みと粒の大きさを左右する生命線です。また、クリタマバチなどの深刻な害虫への対策も欠かせません。
この「栗畑の営み」こそが、消費者の目に触れないところで、年ごとの栗の品質と甘みを守り続けている、生産者の知恵と努力の結晶なのです。



手間を楽しめた人が、秋のごほうびをいちばん甘く感じられるにゃ!
未来への里路|栗の恵みをつなぐために


栗の甘みは季節だけでなく、人と自然の段取りで深まります。
2025年の厳しい状況を踏まえ、これからの”おいしい未来”に向けて課題とヒントを整理します。



甘みの航路を未来にも。さあ”守る冒険”の時間だにゃ!
🌡️ 気候と栽培管理|高温・少雨・台風への備え
温暖化が進む今、栗栽培は猛暑による実割れ・落果の増加、少雨による小粒化や収穫量減少、さらには害虫被害の拡大といった深刻な課題に直面しています。
しかし、この気候リスクに対抗するための技術も進化しています。園地の温度管理を行うための遮光ネットや敷き草の活用、水不足を防ぐ点滴かん水システムの導入、さらには天敵昆虫を利用した生物的防除など、リスクを最小化する知恵が求められます。また、消費者側も「追熟を待つ」「適切な保存」を心がけることで、限られた収穫を有効活用できます。
🪲 持続可能な栽培技術|品種戦略と被害を最小化する知恵
安定した収穫と品質を維持するため、栽培技術は常に進化しています。病害虫対策では、クリタマバチ対策に天敵のチュウゴクオナガコバチを活用するなど、自然の力も借りた防除が進んでいます。また、実を多くつけるための受粉樹の最適配置も重要です。
未来を見据えた品種戦略も活発です。渋皮が剥きやすい「ぽろたん」のような画期的な品種の普及に加え、早生・中生・晩生を組み合わせた長期収穫の設計、そして高温耐性を持つ品種の開発・選抜が、秋の栗の恵みを途切れさせないための重要な取り組みとなっています。
📦 流通・加工技術の革新|価値を高める技術
国内の貴重な栗の価値を最大限に高め、通年で安定供給するためには、流通・加工技術の進化が不可欠です。
保存技術では、超低温貯蔵やCA貯蔵といった技術で栗の品質を長期的に維持できるようになり、真空包装技術も向上しています。また、加工技術においても、冷凍栗ペーストの品質向上や栗パウダーの開発、さらには栗エキスの健康食品化といった多様な試みが進んでいます。
これらの技術と並行し、生産地と菓子店や観光が連携する6次産業化を推進し、オンライン直販システムや体験型観光を充実させることで、地域の物語と共に栗の価値をさらに高めていきます。
👥 後継者育成と技術継承
栗農家の高齢化と離農、それに伴う作付面積の縮小は深刻な課題であり、伝統技術の継承断絶が懸念されています。
この課題を解決するため、地域では新規就農者への手厚い技術指導プログラムが用意され、スマート農業技術の導入支援も進んでいます。また、栗のブランド化をさらに推し進め、収益性を高めることで、若い世代が魅力を感じる産業へと転換する取り組みが加速しています。



つくる人・運ぶ人・食べる人、みんなが甘みの共同航海者だにゃ!
まとめ|甘香とともに歩む“うちの秋”


栗の魅力は、特別な席だけでなく、台所の手仕事と家族の食卓にこそ生きています。追熟を待つ時間、渋皮煮の湯気、炊きあがった栗ご飯のふたを開ける瞬間——その一つひとつが、私たちの“秋の記憶”になります。
2025年の栗は、記録的な猛暑の試練を乗り越えました。収穫量は減少し、価格も上昇しましたが、その分だけ一粒一粒に込められた自然の力と生産者の技術は、例年以上に濃密なものとなりました。
小ぶりでも甘みが凝縮された今年の栗は、私たちに「量より質」「希少性の価値」を改めて教えてくれます。気候変動や後継者不足といった課題を抱えながらも、日本の栗文化を未来へつなぐ取り組みは着実に進んでいます。
産地の技、家庭の工夫、そして分かち合う喜び。甘香は今年も、静かに豊かに、私たちの秋を満たしてくれるでしょう。



小さくても、心に大きな甘みを運んでくれた今年の栗。この記憶を胸に、次の豊作の海へと出航するにゃ!