はじめに|灯台の心臓部、魔法のレンズ

灯台の光が、遠い海の彼方まで届くのはなぜだろう?と考えたことはありますか。 その秘密は、灯台の最上部、光を発する「灯室(とうしつ)」の中に隠されています。
そこには、まるで宝石のように輝く、巨大で複雑なガラス製の「灯台レンズ(フレネルレンズ)」が設置されています。
【POINT】フレネルレンズの基本
- 仕組み: 巨大なレンズを「薄切り」にして光を集める画期的な構造。
- 種類: 「閃光レンズ」や「不動レンズ」など、光り方の違い。
- 等級: レンズの大きさ(焦点距離)で決まるパワーのランク。
この記事では、灯台の心臓部とも言えるこの特殊なレンズに焦点を当て、なぜ光を強力に集め、遠くまで届けることができるのか、その秘密を詳しく解説していきます。

やあ、ココロ船長だにゃ!灯台のてっぺんで輝くあのガラスは「フレネルレンズ」。光を遠くまで届ける、魔法みたいな技術だにゃ!
フレネルレンズとは?発明が生んだ「光の革命」


まず、「フレネルレンズ」とは一体何なのか、なぜそれが生まれたのかを解説します。 フレネルレンズは19世紀に灯台へ普及し、光をより強く遠くまで届ける技術として世界各地(日本含む)に広がりました。



フレネルさん、1823年(仏コルドゥアン灯台で初点灯)からありがとうだにゃ!この発明が、夜の航海を守ってきたにゃ。
1. 従来のレンズが抱えていた問題点
フレネルレンズが登場する前、灯台では単純な凸レンズや反射鏡を使って光を集めようとしていました。 しかし、光を遠くまで届かせるためにレンズを巨大化しようとすると、物理的な限界に直面してしまったのです。
【ALERT】分厚いレンズの弱点
- 重すぎる: 巨大なガラスの塊は数百キロにもなり、回転させるのが困難でした。
- 暗くなる: ガラスが厚ければ厚いほど、光が吸収されて暗くなってしまいます。
- 製造困難: 均一で巨大なレンズを作るのは、当時の技術では不可能に近いことでした。
【CHECK】当時の反射鏡の限界
- 光が弱い: 鏡の反射だけでは、光の到達距離に限界がありました。
- 劣化する:金属製の鏡は潮風で腐食・くもりが出やすく、輝きが失われました。
- 煤(すす)汚れ: 油灯の煤が鏡につきやすく、毎日の掃除が大変でした。
2. フレネルの発想|レンズを「薄く」「分割」する
19世紀初頭、フランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルは、この問題を解決するために画期的なアイデアを思いつきます。 それは、巨大なレンズを同心円状に分割し、それぞれの部分を薄いプリズムとして組み合わせるという方法でした。
【POINT】フレネルレンズの仕組み
- 分割: レンズの表面を階段状に分割し、光を曲げる角度だけを残しました。
- プリズム: 外周部分には「カタディオプトリック・プリズム」を使い、斜めの光も全反射で集めます。
- 再構成: 分割したパーツをパズルのように組み合わせ、一つの巨大なレンズにします。
【CHECK】フレネルレンズのメリット
- 超軽量化: ガラスの量を大幅に減らし、驚くほど軽くすることに成功しました。
- 明るさUP: ガラスが薄くなったことで光の透過率が上がり、より明るくなりました。
- 大型化: 分割パーツ方式で大口径化しやすく、用途に応じた大型レンズが実用化されました。



分厚いレンズを“薄切り”みたいに分けて重ねる発想がスゴいにゃ。光を逃さず集めるカタディオプトリックも天才的だにゃ!
灯台レンズの種類と仕組み|光をどう操るか?


フレネルレンズは、その構造によっていくつかの種類に分けられます。 光を一点に集中させるのか、それとも全方向に広げるのか。目的に合わせて使い分けられています。



光をビームにするか、全体に広げるか、目的別で使い分けるんだにゃ。 ここからは、レンズの種類について詳しく見ていくにゃ!
1. 閃光レンズ(せんこうレンズ)
岬の先端にある大型灯台でよく見かけるタイプで、遠距離まで光を届けるスペシャリストです。 光源から出た光を、レンズの作用で強力な数本のビーム(光束)に変えて放ちます。
【CHECK】閃光レンズの特徴
- ビーム化: 光を水平方向の特定の向きにギュッと集中させます。
- 回転: レンズ全体を回転させることで、遠くからは「ピカッ…ピカッ…」と点滅して見えます。
- 視認性: 暗闇の中で一瞬強く光るため、遠くの船からも発見しやすいです。
【MEMO】よく設置される場所
- 岬の先端: 沖合を航行する船に、陸地の存在を知らせる重要な場所。
- 重要な変針点: 船がコースを変える目印となる、航路上の重要ポイント。
- 孤島: 周囲に明かりがない場所で、遠くからの目印として機能します。
2. 不動レンズ(ふどうレンズ)
こちらは、港の防波堤灯台などで使われるタイプで、周囲をまんべんなく照らす役割を持ちます。 光源からの光を、水平360度に均等に広げるように設計されています。
【CHECK】不動レンズの特徴
- 360度照射: レンズのプリズムが、上下の光を水平方向に屈折させて広げます。
- 回転しない: レンズは固定で、不動光が多いですが、点灯制御で明暗光・閃光にすることもあります。
- シンプル: 回転装置が不要なため故障が少なく、メンテナンスが容易です。
【POINT】不動レンズのメリット
- 死角なし: どの方向から見ても、常に光が見えている状態を作れます。
- 距離感: 常に光が見えているため、船は灯台との距離感を掴みやすいです。
- 経済的: 構造が単純で安価に製造できるため、多くの小型灯台で採用されています。
【MEMO】複合レンズの仕組み
- 構造: 不動レンズの周囲に、回転する「フラッシュ用パネル」を配置しています。
- 光り方: 普段は弱く光りつつ、定期的にピカッと強い光(閃光)を放ちます。
- 名称: このタイプは「固定・閃光複合レンズ」と呼ばれ、複雑な光り方を作れます。



一点集中ビームで遠くまで届ける「閃光レンズ」は、まさに灯台のエースだにゃ!形を見れば、その灯台の役目が分かるのも面白いにゃ。
レンズの等級|焦点距離で決まる光の力


フレネルレンズは、その性能(大きさ)を示す「等級(Order)」で分類されます。 この等級は、レンズそのものの直径ではなく、中心から焦点(電球)までの「焦点距離」によって決まります。



等級は「焦点距離」で決まるって知ってたかにゃ? 第一等レンズは高さ2.5m超え!やっぱり王様はデカイにゃ!
1. レンズの等級一覧とサイズ
等級は基本的に第一等から第六等まであり、数字が小さいほどレンズは大きく、強力になります。 設置場所の重要度に合わせて、適切なサイズが選ばれます。
【POINT】等級と焦点距離(サイズ目安)
- 第1等: 焦点距離 920mm(高さ約2.59m)。最も巨大で強力なレンズ。
- 第2等: 焦点距離 700mm。重要度の高い沿岸灯台で使用。
- 第3等: 焦点距離 500mm。中型灯台の主力として広く普及。
- 第4等: 焦点距離 250mm。中型〜小型灯台で使用。
- 第5等: 焦点距離 187.5mm。小型灯台で使用。
- 第6等: 焦点距離 150mm(高さ約43cm)。最も小型で港湾などで使用。
【CHECK】等級ごとの使い分け(役割)
- 第1等〜第2等: 外洋を航行する大型船向けの、主要なランドマーク。
- 第3等〜第4等: 沿岸を航行する船や、島の間を抜ける船への道しるべ。
- 第5等〜第6等: 港に出入りする船や、漁船向けの身近な目印。
2. 等級と光達距離の関係
レンズが大きいほど、光を効率よく集められるため、光は遠くまで届きます。 ※光達距離は等級だけでなく、光源の明るさ・灯火の高さ・天候でも変動します。
【CHECK】光が届く距離の例
- 犬吠埼灯台(第1等): 約19.5海里(約36km)まで届きます。
- 出雲日御碕灯台(第1等): 約21海里(約39km)まで届きます。
- 小型灯台(第6等): 条件によりますが、数海里〜10海里程度が一般的です。
【MEMO】距離が変わる3つの要因
- レンズの等級: もちろん、レンズが大きい(等級が高い)ほど光は強くなります。
- 光源の明るさ: 中に入れる電球やLEDのパワーも重要です。
- 灯台の高さ: 地球は丸いため、高い位置にあるほど遠くまで光が届きます。



犬吠埼灯台の光が36kmも先まで届くなんて、すごいパワーだにゃ! 船乗りたちは、この等級の違いも頼りに海を渡ってるんだにゃ。
フレネルレンズが灯台の光の仕組みをどう変えたか?


フレネルレンズの発明は、夜間の海上交通の安全性を飛躍的に向上させました。 それは単に「明るくなった」だけではありません。



フレネルレンズが登場する前と後では、夜の海の安全度が全然ちがうんだにゃ。 船乗りたちにとって、どれだけ心強い光になったことか!
1. 「個性(灯質)」を生み出した
フレネルレンズの軽量化で大型レンズも回転させやすくなり、光に「リズム(灯質)」を持たせられるようになりました。 これにより各灯台が固有の光り方で識別できるようになったのです。
【POINT】灯質による識別
- 位置特定: 船乗りは光のリズムを見るだけで、「あそこは〇〇灯台だ」と特定できます。
- パターンの増加: 回転速度やレンズ枚数の組み合わせで、多様な点滅パターンを作れます。
- 誤認防止: 近くにある灯台同士で違うリズムにすることで、見間違いを防げます。
【CHECK】代表的な光り方
- 単閃光: ピカッ……ピカッ……と一定間隔で1回ずつ光る。
- 群閃光: ピカッピカッ……ピカッピカッ……と連続して光るのを繰り返す。
- 互光: 赤・白・赤・白……と色が交互に変わる(※カラーフィルター併用)。
2. より遠く、より確実に
従来の反射鏡では届かなかった距離まで光が届くようになり、船は陸地や危険な岩礁を、より早い段階で発見できるようになりました。 現代の灯台が、遠くからでもハッキリと識別できるのは、すべてこのフレネルレンズの発明のおかげなのです。
【CHECK】安全性の劇的向上
- 早期発見: 危険な岩礁や浅瀬を、手前の安全な海域から確認できるようになりました。
- 悪天候への強さ: 雨や霧では見通しが落ちますが、光度向上により視認性の改善に役立ちました。
- 航路の拡大: 夜間でも安心して航行できる海域が広がり、物流が活発になりました。
【MEMO】歴史を変えた発明
- 海難事故の減少: フレネルレンズは視認性を高め、海上交通の安全性向上に大きく貢献しました。
- 灯台建設ラッシュ: 性能が証明されたことで、明治期の日本を含め、世界中で建設が進みました。
- 現在も現役: 200年前に考案された基本構造は、最新のLED灯台でも応用されています。



このレンズで、灯台は光り方に“個性”を持てたにゃ。夜の海の安全を支える要だにゃ。
まとめ|フレネルレンズは灯台の”目”であり”心臓”


今回は、灯台の光を遠くまで届ける秘密、「フレネルレンズ」の仕組みと種類について解説しました。
19世紀に生まれたこの発明は、単なるガラスの塊ではなく、数え切れないほどの船と命を救ってきた「希望の光」そのものです。
【POINT】フレネルレンズのまとめ
- 革命的発明: 巨大なレンズを薄いプリズムに分割し、軽量化と高効率化を実現しました。
- 種類の使い分け: 遠くを照らす「閃光レンズ」、周囲を照らす「不動レンズ」などがあります。
- 等級の定義: 焦点距離によって「第1等」から「第6等」まで分類され、第1等が一般的に最大級です。
灯台のあの美しく力強い光は、この精巧なガラス細工があってこそ生まれるものです。
もし海沿いを訪れた際は、夜の海を照らすその光の先に、美しいレンズが回転していることを思い出してみてください。



フレネルレンズは灯台の“目”であり“心臓”だにゃ!あの光が、今も昔も船乗りたちの命を守っているんだにゃ。








