灯台守とは？その仕事内容と役割、歴史を船長が解説

はじめに｜「灯台守」という職業のロマンと真実

「灯台守（とうだいもり）」という言葉には、どこか孤独で、ロマンチックな響きがあります。

映画や物語の影響で、岬の先端で孤独に光を守る姿を想像するかもしれません。

しかし、「灯台守」とは具体的にどのような仕事をし、どのような役割を担っていたのでしょうか？

この記事は、「灯台守」という存在について、その歴史的な背景から、「現在はどうなっているのか？」「仕事内容は？」「なり方は？」「年収の噂は？」といった様々な疑問に答える、「灯台守」トピックの総まとめ記事です。

この記事を読めば、「灯台守」という職業のロマンと、それを支えた過酷な現実（真実）のすべてが分かります。

灯台守とは？（役割と現在の状況）

まず、「灯台守」とは何か、その基本的な定義について解説します。

あわせて、読者が最も知りたいであろう「現在の状況」（今もいるのかどうか）についても触れていきます。

1. 灯台守の「役割」

「灯台守」とは、その名の通り、灯台の光（灯火）が消えないように24時間体制で守り、維持管理する専門の職員のことです。

彼らの任務は、単なる見張りではありません。

灯台の光は、船が自分の位置を知り、危険な岩礁を避けるための「道しるべ」です。

灯台守は、その「命の光」を、嵐の日も霧の日も絶やさず灯し続けるという、海の安全保障の根幹を担っていました。

2. 灯台守は現在もいるの？（結論）

「灯台守 現在」というキーワードで検索する人が多いように、多くの人が「今も灯台守はいるの？」と疑問に思っています。

結論から言うと、伝統的な「住み込みの灯台守」は、現在（2025年時点）の日本には存在しません。

技術の進歩（自動化）により、2006年（平成18年）12月5日に、日本最後の有人灯台であった「女島灯台」（長崎県）が無人化され、灯台守の有人時代は終わりを告げました。

※ 詳しくは → 灯台守は現在もいるの？日本最後の灯台守と自動化の歴史

灯台守の「仕事内容」と「生活」

では、灯台守は具体的にどのような「仕事内容」をこなし、どのような「生活（暮らし）」を送っていたのでしょうか。

その日常は、私たちが想像する「ロマン」とは裏腹の、「過酷」な現実との戦いでした。

1. 灯台守の「仕事内容」（光の番人）

灯台守は、高度な知識を必要とする「技術者」でした。

主な任務には、以下のようなものがあります。

• 灯火（とうか）の監視とレンズの清掃:
  • 灯台の命である巨大な「フレネルレンズ」を毎日磨き上げ、夜通し光が消えないか監視しました。
• 機器の操作とメンテナンス:
  • レンズを回転させるゼンマイ式回転装置（重りで駆動）の巻き上げや、水銀槽の管理、発電機・蓄電池の保守点検を行いました。
• 霧信号所（霧笛）の運用:
  • 霧が発生すると、何日も続く大音量の霧笛を鳴らし続けるという、精神的にも肉体的にも過酷な任務がありました。
  • ※ 海上保安庁が所管する霧信号所は、2010年3月31日に全廃されています。
• 通信と気象観測:
  • 定時に気象観測を担い、そのデータが気象庁や海上保安庁の「船舶気象通報」に活用されました。
  • ※ 中短波による「灯台放送」は2016年に廃止、電話サービスも段階的に廃止が告知されています。

2. 灯台守の「生活（暮らし）」

灯台守の「生活（暮らし）」は、多くの場合、灯台に併設された官舎（いえ）で行われました。

しかし、勤務地は都市近郊（例：犬吠埼灯台）もありましたが、多くは本土から遠く離れた離島や、人が住まない岬の先端でした。

そうした僻地（へきち）では、補給船が天候で長期間滞ることもあり、官舎の菜園や釣りで食料を補うことも重要な「仕事」の一部でした。

「孤独」や「地獄」とも呼ばれた、社会からの隔絶や霧笛の騒音との戦いでもあったのです。

※ 詳しくは → 灯台守の仕事と生活とは？孤独で地獄だった？過酷な日常と暮らし

灯台守の「歴史」と「なり方」

灯台守という職業は、日本の近代化と共に生まれました。

では、彼らはどのような「歴史」を歩み、どうすれば「なる」ことができたのでしょうか。

1. 灯台守の歴史

日本で灯台が本格的に整備されたのは、明治時代に入ってからです。

1866年（慶応2年）の「改税約書（江戸協約）」（で定められた8基）に基づき、フランス人技師レオンス・ヴェルニーの指導のもと、灯台建設が進められました。（※1868年の「大阪条約」でさらに5基が追加され、計13の条約灯台が整備されました。）

日本で最初に初点灯した洋式灯台は、1869年（明治2年1月1日／新暦1869年2月11日）に神奈川県に設置された「観音埼灯台」です。

※“日本の灯台の父”と呼ばれるイギリス人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンは、その後、日本各地で多数の灯台建設を担いました。

2. 灯台守になるには？（海上保安庁の公務員）

では、「灯台守になるには」どうすればよかったのでしょうか。

「灯台守」という独立した職業の「求人」や「募集」は、基本的には存在しませんでした。

その正体は、海上保安庁（またはその前身組織）に所属する「国家公務員」だったのです。

海上保安官として採用された後、海上保安学校（京都府舞鶴市）にかつて設置されていた「灯台課程」で、航路標識に関する専門教育を受けるのが基本的なルートでした。

※「灯台課程」は2024年度（令和6年）の教育体系再編により廃止されました。現在は「一般課程（通信コース）」などが航路標識に関する基礎教育を担っています。

※ 詳しくは → 灯台守になるには？海上保安庁の職員（公務員）だった？昔の求人情報を解説

灯台守にまつわる「噂」と「文化」

「灯台守」は、そのミステリアスでロマンチックな存在感から、多くの「噂」や「文化（物語）」を生み出してきました。

これらは、灯台守という職業の「意味」を、事実とは別の側面から豊かにしてくれています。

1. 「年収8000万」の求人・募集の噂は本当？

「灯台守 年収8000万 求人」や、高額な給与の募集がネットで噂になることがあります。

結論から言うと、これは「デマ」です。

この噂の元ネタは、海外の「灯台ホテル（B&B）」（例：米・East Brother Light Station）の管理人（ペア）募集（年収$130k～$140k程度）が誇張された可能性が高いです。

実際の灯台守（公務員）が、このような高給を得ていた事実はありません。

※ 詳しくは → 灯台守の年収8000万は本当？求人の噂はデマ？元ネタと真相を徹底解説

2. 唱歌「灯台守の歌」のロマン

「♪おいら岬の灯台守は」という歌詞で知られる唱歌『灯台守の歌』も、灯台守のイメージに強く影響を与えています。

原曲は外国曲とされていますが、米国の”The Golden Rule”（I.J. Zimmermann作）であるという説が有力です（※イギリス民謡説など諸説あり）。そのノスタルジックなメロディが、灯台守の孤独やロマンを伝えています。

※ 詳しくは → 唱歌「灯台守の歌」とは？歌詞の意味と作者、歴史を解説

3. 映画『喜びも悲しみも幾歳月』の影響

「灯台守」のロマンチックなイメージを決定づけたのが、1957年（昭和32年）に公開された映画**『喜びも悲しみも幾歳月』**です。

灯台守夫婦が、妻と共に日本各地の灯台を転々としながら過酷な任務を続けた姿を描いたこの大ヒット作は、「灯台守＝崇高な仕事」というイメージを国民に広く植え付けました。

※ 詳しくは → 灯台守が登場する映画おすすめ5選！『喜びも悲しみも幾歳月』から洋画まで

まとめ｜「灯台守」とは、海の安全を支えた技術者だった

今回は、「灯台守とは」何か、その「仕事内容」や「役割」、「歴史」から「文化」まで、その全体像を解説しました。

記事のポイントを最後におさらいします。

1. 「灯台守」とは、灯台の光を守る「航路標識の維持管理」を担う専門の技術者でした。
2. その正体は「海上保安庁」の「国家公務員」であり、なるためには専門教育が必要でした。
3. 伝統的な「住み込みの灯台守」は2006年に終了し、現在は「自動化・無人化」されています。
4. 「年収8000万」の噂はデマですが、映画や歌など「文化」としてのロマンは今も強く残っています。

「灯台守」という職業は歴史に幕を下ろしましたが、彼らが守ってきた「海の安全」への思いと、そのロマンチックな物語は、これからも灯台の光と共に語り継がれていくはずです。