ぬめりに宿る秋の恵み|畑からの贈り物

猛暑の夏を乗り越え、ついに秋の味覚・里芋の季節が到来しました。
2025年は記録的な暑さの影響を受けながらも、主産地の生育は概ね順調です。農林水産省(東京都中央卸売市場向けの聞き取りによる10月見通し)では、入荷は埼玉が中心、千葉は次期作の種芋確保で出荷やや控えめ、価格はやや平年を上回るとされています。
各地では特有のぬめり成分に込められた栄養価と、ホクホクからねっとりまで多彩な食感で、秋の食卓を彩る準備が整いました。煮っころがしから芋煮まで、日本各地の伝統料理に欠かせない存在として、今年も変わらぬ愛情で迎えられています。
この記事では、2025年の里芋が見せる旬の魅力と最新収穫状況、そして産地や文化を通じて広がる里芋の奥深い世界をたっぷりお届けします。
さあ、ぬめりと栄養に満ちた里芋探検の旅に出発しましょう。

待ちに待った里芋の季節、ねっとりとした恵みがいよいよ開幕だにゃ!
里芋速報!畑がざわめく秋の主役


土の恵みとともに顔をのぞかせる、白い宝石たち。
畑全体がざわめく中、今年の里芋の最新状況を速報でお届けします!



さあ、この秋は”ぬめりの物語”が土から立ちのぼるにゃ!
🌡️ 里芋速報①|収穫と相場の最新動向
≪収穫状況|主産地:順調/千葉:種芋優先≫
主産地(埼玉・宮崎・愛媛など)の生育は概ね順調。千葉県産は次期作の種芋を確保しながらの出荷となるため、10月の出荷数量はやや平年を下回る見込み。(東京都中央卸売市場向けの10月見通し)
≪相場:”やや高値”で推移≫
農林水産省(東京都中央卸向け聞き取り)の10月見通しでも、里芋の価格は「やや平年を上回って推移」する見込み。
🗺️ 里芋速報②|地域トピックまとめ
畑の風土と気候を活かした、各地の最新動向です。
- 埼玉県(主力産地)
生育は概ね順調。全国の出荷量では近年もトップ級(R5出荷量1位)で、全国シェアはおよそ13%前後が目安。 - 千葉県(品質重視)
次期作の種芋確保を優先しつつ計画的出荷。主要産地は北総地域(八街・富里・山武 など)。 - 宮崎県(温暖な気候活用)
温暖な気候を活かし「石川早生」を中心に構成。早期出荷で需要期前半を支え、R5出荷量は全国2位。 - 愛媛県(ブランド化推進)
東予の3JA(JAうま・JAえひめ未来・JA周桑)が四国中央市の「愛媛さといも広域選果場」で共同選果。県オリジナル品種(愛媛農試V2号)を「伊予美人」ブランドで出荷。R5出荷量は全国4位。
🎪 里芋速報③|秋のイベント情報
この秋は、里芋の魅力を体感できるイベントが各地で開催されています。
- 第37回日本一の芋煮会フェスティバル(山形)
2025年9月14日(日)開催済み。直径6.5mの大鍋「三代目鍋太郎」での芋煮を実施。 - 第38回五泉市さといもまつり(新潟)
2025年10月12日(日)開催。里芋汁・新米おにぎりの整理券配布などの実施要項が公開済み。 - 第37回いものこまつり in 鶴ヶ池(秋田・横手)
2025年9月21日(日)10:00–19:00。山内いものこのPRや、“いものこ汁”販売などでにぎわう恒例行事。 - 第42回 磐井河原いものこ会(岩手・一関)
2025年9月27日(土)〜11月3日(月・祝)の土日祝(10:00–15:00)。河原で芋煮を楽しむ定番イベント。



土の恵みを直接感じられる体験、きっと”最初の一口”が心に残るにゃ!
里芋の産地をめぐる|埼玉・千葉・宮崎・愛媛


畑の土や風土の違いが、里芋の食感や風味を変える――それがこの食材の奥深さ。
2025年の畑をめぐりながら、外せない産地の“今年の顔つき”をのぞいていきます。



産地ごとに味わいが変わるにゃ。畑の旅に出発だにゃ!
🍠 埼玉県|”里芋王国”の技術力と安定供給
関東ローム層が育む、安定品質の里芋
埼玉県は、令和5年の出荷量で全国1位(約1.27万t、全国の約15%)の主要産地です。関東ローム層の肥沃な土壌と適度な水分管理により、品質の安定した里芋を安定供給しています。深谷市・杉戸町をはじめ、熊谷市・羽生市・北本市・小川町など県内各地で「土垂」「八つ頭(丸系八つ頭を含む)」が栽培されています。
≪2025年の動き≫
- 技術の継承と革新
ベテラン農家から若手への技術継承が進む一方、スマート農業技術の導入も加速。土壌管理から収穫まで、効率化と品質向上を両立した栽培が展開されています。 - ブランド化の推進
「丸系八つ頭」は埼玉県オリジナル系統で、名称は平成26年に商標登録済。皮のむきやすさとホクホク食感が特徴です。 - 6次産業化の展開
直売所や加工品開発を通じた6次産業化が進み、消費者との直接的なつながりを重視した販売戦略が展開されています。
🌊 千葉県|品質重視の計画的栽培
北総の産地が支える、安定の作柄
千葉県は令和5年の出荷量で全国3位(約9,080t)。主要産地は北総地域の八街市・富里市・山武市です。千葉は次期作の種芋確保を優先し、10月の出荷はやや平年を下回る見込みです。(2025年10月・東京都中央卸見通し)
≪2025年の動き≫
- 持続可能な生産体制
次期作の種芋確保を最優先とした計画的出荷により、持続可能な生産体制を維持。短期的な利益よりも長期的な品質維持を重視した経営を実践しています。 - 品質向上への取り組み
土壌改良と栽培技術の向上により、年々品質が向上。特に食感と風味のバランスに優れた里芋の生産に注力しています。 - 地域連携の強化
近隣産地との情報共有や技術交流を通じて、地域全体の技術レベル向上を図っています。
🌺 宮崎県|温暖な気候を活かした早期栽培
南国の太陽が育む、早生品種の里芋
宮崎県は令和5年の出荷量で全国2位(約1.02万t)。温暖な気候を活かし「石川早生」を中心に、中生やセレベス・京芋なども生産。需要期の前半を支える早期出荷が特徴です。都城市を中心とした産地では、年間を通じた安定供給を支えています。
≪2025年の動き≫
- 気候変動への適応
温暖化の進行に対応した栽培技術の開発が進み、高温期でも安定した品質を維持する技術が確立されています。 - 早期出荷の強化
石川早生品種の特性を活かし、8月からの早期出荷により、市場での優位性を確保。消費者の早期需要に応える供給体制を構築しています。 - ブランド化の推進
宮崎ブランドとしての認知度向上を図り、品質の高さと安定供給をアピール。県内外での販売拡大を目指しています。
🏔️ 愛媛県|”伊予美人”ブランドの挑戦
瀬戸内の温暖な気候が生む、高品質里芋
愛媛県は令和5年の出荷量で全国4位(約8,500t)。東予3JA(JAうま・JAえひめ未来・JA周桑)が四国中央市の「愛媛さといも広域選果場」で共同選果し、「伊予美人」ブランドで広域出荷しています。瀬戸内海の温暖な気候と適度な降水量により、粘りと甘みのバランスに優れた里芋を生産しています。
≪2025年の動き≫
- ブランド力の強化
「伊予美人」ブランドの品質基準を更に厳格化し、消費者の信頼を獲得。糖度や食感に明確な基準を設け、品質の見える化を推進しています。 - 販売戦略の多様化
直売所販売から都市部への出荷まで、多様な販売チャネルを活用。特に関西圏での認知度向上に注力しています。 - 生産技術の向上
土壌管理技術の向上により、年々品質が向上。特に食感の滑らかさと風味の深さで高い評価を獲得しています。



技術の埼玉、品質の千葉、早生の宮崎、ブランドの愛媛…どの港に寄港するか、迷うのもまた楽しいにゃ!
里芋と文化|秋の暮らしを彩る”芋の物語”


里芋は食卓を超え、日本の秋の文化に深く根ざしてきました。
この記事では、里芋を核とした郷土料理、食文化の進化の奥深い世界をたっぷりお届けします。



家族で囲んだ里芋の煮物、その優しい味は忘れられないにゃ!
🍠 煮物文化|家庭の味から郷土料理へ広がる伝統
里芋といえば「煮っころがし」に代表される煮物文化が日本全国に根付いています。特有のぬめり成分などの特性により煮崩れしにくいとされ、じっくり煮込むことで甘みが増すと言われます。こうした特性が各地の煮物文化の発達を支えてきました。
≪最近の動き≫
- 時短調理の進化
電子レンジや圧力鍋を活用した時短煮物レシピが人気を集め、忙しい現代生活でも手軽に里芋料理を楽しめる環境が整っています。 - 健康志向の高まり
里芋の低カロリー・高食物繊維という特性に注目が集まり、ダイエット食材としての活用が拡大しています。 - 調味料の多様化
従来の醤油・みりんベースから、出汁や塩麹を活用した優しい味付けへの関心が高まっています。
🍯 芋煮文化|東北が誇る秋の風物詩
東北地方を中心とした「芋煮」文化は、里芋を主役とした日本独特の食文化です。山形県の牛肉×醤油ベース、宮城県の豚肉×味噌ベースなど、地域ごとの個性が際立つ料理として発展してきました。
≪最近の動き≫
- 大規模イベントの定着
「日本一の芋煮会フェスティバル」など、芋煮会の大鍋イベントが各地で定着し、観光資源としても注目を集めています。 - 家庭での定着
東北以外の地域でも芋煮レシピが広まり、全国的な秋の家庭料理として定着しつつあります。 - 多様なアレンジ
伝統的なレシピに加え、カレー風味や洋風アレンジなど、現代的な味付けへの挑戦も見られます。
🎪 体験型文化|芋掘りから調理まで
里芋は、人々が集まる「体験」の主役として注目を集めています。芋掘り体験から調理体験まで、食材を通じた文化的活動が各地で展開されています。
≪開催トレンドの最新傾向≫
- 教育プログラムとの融合
小学校の農業体験や食育プログラムに里芋栽培・収穫体験が組み込まれ、子どもたちの食への関心を高める役割を果たしています。 - 都市農業との連携
都市近郊での市民農園や体験農場で里芋栽培が人気を集め、都市住民の農業体験需要に応えています。 - インバウンド観光への展開
日本の伝統的な農業体験として、外国人観光客向けの里芋掘り・調理体験プログラムが各地で開催されています。
🏡 家庭の食卓|世代を超えて愛される味
里芋は、煮っころがし、里芋の味噌汁、きぬかつぎといった定番料理で、家庭の食卓に欠かせない秋の主役です。そのぬめりのある食感と優しい甘みは、特別な技術を必要とせず、誰でも手軽に秋の恵みを感じられる日本の食文化の象徴です。
≪最近の動き≫
- 調理の簡便化
冷凍里芋や皮むき済み里芋の普及により、手軽に里芋料理を楽しめる環境が整っています。 - 栄養価への注目
カリウムや食物繊維(ぬめり成分由来の水溶性食物繊維を含む)、ビタミンB1などへの関心が高まり、健康志向とともに需要が下支えされています。 - 地域料理の継承
各地の郷土料理(福井の里芋のころ煮、秋田のいものこ汁など)が家庭料理として受け継がれ、地域文化の継承に貢献しています。



家族みんなで楽しめる里芋は、秋の団らんの主役にゃ!優しい甘みが、心も温めてくれるにゃ!
未来への畑道|里芋と環境のこれから


里芋のぬめりと甘みは、気候と土壌、そして生産者の技術の結晶です。
これからの“美味しい未来”を守るため、現場の課題とヒントを整理します。



ぬめりの航路を未来にも。さあ”守る冒険”の時間だにゃ!
🌡️ 気候変動との向き合い方|安定栽培技術の確立
里芋の安定供給と品質維持には、気候変動という地球規模の課題への対応が欠かせません。
≪気候変動による主な課題≫
温暖化の進行により、高温による生育不良や水分管理の難しさが課題となっています。特に梅雨期の多雨や夏季の干ばつは、里芋の品質に大きな影響を与える要因となっており、安定した栽培技術の確立が急務となっています。
≪現状の対策と新たな動き≫
この課題に対抗するため、産地では畝の高さ調整による排水対策、マルチ栽培による土壌水分の安定化、遮光ネットによる高温対策といった技術が導入されています。さらに、耐暑性品種の開発や栽培時期の調整により、気候変動に適応した生産体制の構築が進んでいます。
🏭 品種開発と技術革新|次世代里芋への挑戦
里芋の価値をさらに高めるため、品種開発と技術革新が進んでいます。
≪品種と栽培技術の進化≫
新品種では、皮むきが容易な品種、ぬめりを抑えた調理しやすい品種、逆にぬめり成分を強化した機能性品種の研究開発が活発化しています。栽培面では、土壌センサーを活用した精密な水分管理やAIによる生育予測など、スマート農業技術の導入が加速しています。
≪加工技術による価値向上≫
加工面では、冷凍技術による通年供給体制の強化や、里芋の機能性成分(ガラクタン、グルコマンナン)を活かした健康食品開発が進んでいます。これらの技術革新が、国内の貴重な里芋の価値を最大限に高め、消費の拡大を支えています。
📦 流通・マーケティングの進化|価値を伝える仕組み
国内の貴重な里芋の価値を最大限に高めるため、流通・マーケティング戦略が多様化しています。
≪国内における価値の創出≫
産地直送やオンライン販売の拡大に加え、芋掘り体験や調理体験を組み合わせた6次産業化が進み、地域ブランド化による付加価値が向上しています。この取り組みが、生産地の物語とともに里芋の価値を消費者へ直接伝える仕組みを作っています。
≪健康機能性の訴求≫
里芋に含まれるカリウム、食物繊維、ビタミンB1などの栄養成分に関するエビデンス構築が進み、健康食材としての認知度向上を目指した取り組みが活発化しています。
👥 持続可能な産地づくり|次世代への技術継承
里芋農家の高齢化や離農を防ぎ、持続可能な産地を築くことは喫緊の課題です。
≪技術と人材の継承≫
この課題を解決するため、新規就農者への手厚い技術指導プログラムが用意され、スマート農業技術の導入支援が進められています。これにより、伝統技術と最新テクノロジーを融合させ、若い世代が魅力を感じる産業へと転換する努力が続けられています。
≪経営と環境の持続性≫
生産者の経営安定化に向け、契約栽培などを活用したつくる人・運ぶ人・食べる人の連携が強化されています。また、有機栽培・減農薬栽培の拡大といった環境配慮型農業への取り組みも強化されており、土壌改良を通じて持続可能性の向上を目指しています。



つくる人・運ぶ人・食べる人、みんなでぬめりの共同航海者にゃ!技術と愛情で、未来の食卓も滑らかにするにゃ!
まとめ|ぬめりとともに歩む秋の記憶


里芋の魅力は、特別な料理だけでなく、家庭の台所と日々の食卓にこそ生きています。芋掘り体験の土の感触、煮っころがしの優しい香り、家族で囲む芋煮の湯気——その一つひとつが、私たちの“秋の記憶”を彩ってきました。
本年は記録的な暑さのなかでも、主産地(埼玉・宮崎・愛媛など)は概ね順調。一方で千葉は次期作の種芋確保を優先し、10月は出荷控えめ・相場はやや高値の見込みとされています(市場見通し)。
ぬめり由来の水溶性食物繊維やカリウム、比較的低めのカロリーといった特性から、里芋は“秋だけ”にとどまらず通年で選ばれる食材になりつつあります。冷凍・下処理品の普及、品種改良、スマート農業の活用など、現場の工夫も広がっています。
各地の郷土料理から家庭の煮物まで、里芋文化の継承と発展、そして次世代への技術継承——これらすべてが、未来の食卓をより豊かにする希望の芽となっています。
この秋、土の恵みを心ゆくまで味わい、次の収穫への感謝と期待を込めて、里芋探検を締めくくりましょう。



ぬめりに込められた栄養と愛情、心に大きな満足を運んでくれた今年の里芋。この記憶を胸に、次の豊作の海へと出航するにゃ!