灯台守になるには？海上保安庁の職員（公務員）だった？昔の求人情報を解説

はじめに｜「灯台守」という職業への憧れ

「灯台守（とうだいもり）」という、孤高の響きを持つ職業。

映画や物語の影響で、「灯台守になりたい」「どうすればなれるんだろう？」と、そのロマンチックな仕事に憧れを抱いたことがあるかもしれません。

あるいは、「灯台守 求人」や「灯台守 募集」と、現代の就職先として検索した方もいるでしょう。

しかし、伝統的な「住み込みの灯台守」は2006年にその役目を終えました。

この記事では、「どうすれば灯台守になれたのか？」という歴史的な疑問に焦点を当て、灯台守が「海上保安庁」の「公務員」だったという事実、そして当時の採用（求人）や専門教育について、船長が徹底的に解説していきます。

結論！「灯台守」は海上保安庁の国家公務員だった

まず、読者の皆さんが最も知りたいであろう結論からお伝えします。

「灯台守」という独立した職業の一般「求人」や「募集」は、基本的には存在しませんでした。

1. 灯台守の正体は「海上保安官」

では、「灯台守」とは何だったのか。

彼らの正式な身分は、海上保安庁（設立以前は逓信省（ていしんしょう）の燈台局など）に所属する「国家公務員」でした。

灯台の管理・運用は国の事業であり、灯台守は「航路標識の維持・運用」という専門業務を担当する海上保安官（または技官）だったのです。

2. 「灯台守になるには？」— 採用と配属

灯台守になるには、まず海上保安庁（またはその前身組織）に職員として採用される必要がありました。

海上保安庁には、船の運航、捜査、情報通信など様々な業務がありますが、その中の一つが「航路標識（灯台）」の管理部門です。

海上保安官として採用された後、本人の適性や希望、研修を経て、航路標識部門に配属され、その勤務地の一つとして全国各地の「有人灯台」へ赴任する、というのが「灯台守」になるための基本的なルートでした。

灯台守になるための専門教育

灯台守の仕事は、非常に専門的です。

そのため、海上保安官として採用された後も、特別な教育を受ける必要がありました。

1. 海上保安学校での専門課程

灯台守を含む航路標識の専門家を養成するため、海上保安学校（京都府舞鶴市）には、かつて「灯台課程」と呼ばれる専門研修がありました。

現在は、「情報システム課程」がその役割の一部を引き継いでおり、航路標識（AtoN）の設計・整備・管理を担う人材が養成されています。

2. 灯台守は「技術者（エンジニア）」だった

灯台守の仕事は、ロマンチックなイメージとは裏腹に、非常に高度な「技術職」でした。

• 光学機器の専門家:
  • 巨大なフレネルレンズの清掃・調整。
• 機械工学者:
  • レンズを回転させる水銀槽やゼンマイ式回転装置のメンテナンス。
• 電気技師:
  • 初期の発電機や蓄電池の管理。
• 通信士・観測員:
  • 歴史的に灯台は気象観測の拠点でもあり、無線での気象報告や緊急連絡も重要な任務でした。

これらすべてを、僻地（へきち）で、限られた人員でこなす必要があったため、灯台守には「何でもできる技術者」としての能力が求められました。

なぜ「灯台守」の求人は（現在は）ないのか？

では、なぜ現在（2025年時点）は、「灯台守 求人」などと日本で検索しても、募集が見つからないのでしょうか。

それは、その「仕事」自体が「自動化」によって消滅したためです。

1. 2006年の「自動化」による有人灯台の消滅

灯台守という「職務」が日本からなくなったのは、2006年（平成18年）12月5日です。

この日、日本最後の有人灯台であった「女島灯台」（長崎県）が無人化され、灯台に住み込んで管理するという仕事（＝灯台守）は、公式にその役目を終えました。

これにより、日本のすべての“有人灯台”が無人化されました。

2. 「灯台守の仕事」が「現代の仕事」へ

灯台守の仕事はなくなりましたが、灯台の「管理」がなくなったわけではありません。

かつて灯台守が現地で行っていた仕事は、現在、以下のように分担されています。

• 監視・運用
  • 海上保安庁の職員が、各管区本部・海上保安部等に設置された「監視端末」や、IoT・クラウドを活用した「遠隔監視システム（灯火監視クラウド）」の導入も進められており、灯台の状態を把握しています。
• 保守・点検
  • 海上保安庁の職員が、定期的に「巡回メンテナンス（船・ヘリ）」で現地を訪れ、修理や点検を行っています。
• 清掃・管理（地域連携）
  • 2022年から始まった「航路標識協力団体制度」により、地域のNPOや団体が清掃や一般公開などを担うケースも増えています。

3. 「灯台守 現在」の記事で詳しく解説

「灯台守は現在どうなっているのか？」、「日本最後の灯台守」の話、そして「現代の灯台を支える人々」については、以下の記事で詳しく解説しています。

※ 詳しくはこちら → 灯台守は現在もいるの？日本最後の灯台守と自動化の歴史

まとめ｜灯台守は「選ばれし技術者（公務員）」だった

今回は、「灯台守になるには」どうすればよかったのか、その求人や仕事の実態について解説しました。

記事のポイントを最後におさらいします。

1. 「灯台守」という単体の「求人」や「募集」は、基本的には存在しませんでした。
2. 灯台守の正体は、海上保安庁（またはその前身組織）に所属する「国家公務員」でした。
3. 灯台守になるには、海上保安学校などで専門教育を受けた、高度な「技術者」である必要がありました。
4. 2006年に日本のすべての“有人灯台”が無人化されたため、現在「灯台守」という職業（常駐職）は存在しません。

灯台守とは、ロマンチックなイメージとは裏腹に、国の安全を支えるという強い使命感を持った、選ばれし「海の技術者（公務員）」だったのです。